虎番記者席

■ 虎よ!さらば…
 5年間の総決算と位置づけたCS敗退から一夜。上下濃いグレーのスーツで大阪市内の電鉄本社を訪れた岡田監督は、約30分間、坂井オーナーにシーズン報告を行った後、退団会見を行い、正式に猛虎に別れを告げた。

 「重圧から解放され安堵感?解放したくなかったけどな。成績には満足してるが、優勝できなかったのが一番の原因やから。今後?ずっと野球見てきたから、見るのは1週間に2、3回でええわ」

 13差を逆転される歴史的V逸で、タイガースのユニホームを脱ぐことに後悔はない。ただ、勝負に負けたことが悔しい。会見中は淡々と話していたが、終わるに近づき、目には再び、熱いものがあふれていた。

 常勝軍団を築きあげんと、総てを注いできた5シーズン。「よく5年もやった。選手も勝たないといけないという、いい経験をさせてあげられたと思う。充実の5年間だった」と、指揮官生活を振り返った。

 猛虎を愛し、そして今も、その思いが変わることはない。コーチとして阪神に戻ってきてから11年。「一番、印象に残っていることは?」と問われ、2軍時代に藤川、関本、浜中(オリックス)らを鍛え上げ、1軍で監督−選手の立場として、ともに戦えたことを挙げた。

 前日20日の中日戦後、胴上げされ号泣した。「勝ってユニホームを脱ぐのが理想だったが(胴上げされて)嬉しかった」。ナインに感謝しつつも涙については「悔し涙。嬉し涙なんかないよ」と、最後まで負けず嫌いな勝負師らしい一面を見せた。

 「ここ2、3年、最終的に勝てなかった。(原因が)何か分からないが、足りないものがある。ただ、100%に近い状態で新体制に受け継いでもらえるかな」

 岡田は去る。だが、岡田野球の申し子らが、新たな指揮官と“融合”し、さらなる花を咲かせてくれるはずだ。
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